要旨
OpenAIは、来年から自社開発のAIチップの量産を開始する計画を進めていると、Financial Timesが報じました。これは、急速に増加するユーザー需要に応えるための計算能力を確保し、現在依存しているNVIDIAへの依存度を下げる狙いがあります。報道によれば、このカスタムAIチップは、米半導体大手Broadcomと共同で設計されており、BroadcomのCEOは最近、新規顧客から100億ドル規模の受注があったことを明かしました。Broadcomは顧客名を公表していませんが、Financial Timesの情報筋によれば、この顧客はOpenAIであり、OpenAIはこのチップを販売する計画はなく、社内利用に限定する方針です。
背景
OpenAIが自社チップの開発を模索していることは以前から報じられていました。Reutersは2023年に、OpenAIがすでにAIチップの自社開発の可能性を検討していたと報じています。これは、当時Sam Altman CEOが、GPUの供給不足が同社APIの速度や信頼性に影響を与えていると指摘したことを背景にしています。過去の報道では、OpenAIはBroadcomおよび台湾のTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Co.)と協力して独自製品の開発に取り組んでいるとされていますが、今回の報道ではTSMCとの協業が継続しているかどうかは明らかにされていません。
OpenAIは、最新の大型言語モデルGPT-5の公開後、Altman氏が同社の計算資源体制の強化計画を発表しました。Altman氏は、ユーザー数の増加に対応するため、まず有料のChatGPTユーザーを優先しつつ、計算リソースを今後5か月で倍増させると述べています。自社開発のAIチップを導入することで、GPUの供給不足による制約を回避し、計算リソースの拡張を円滑に進められるだけでなく、運用コストの削減も期待できます。
報道によると、OpenAIが開発中のカスタムAIチップは「XPU」と呼ばれるもので、将来的にはAI市場で大きなシェアを占める可能性があると指摘されています。現在のところ、AIチップ市場では依然としてNVIDIAが圧倒的な存在感を持っています。NVIDIAは、今年第2四半期(7月27日終了)の売上が前年同期比で56%増加したことを発表しており、特に中国向けにH20チップを出荷する必要もない状況で、好調な業績を維持しています。
自社 AI 効率
OpenAIが自社チップを開発する背景には、AI分野での競争激化と、計算リソース不足によるサービス提供の制約があります。これまでOpenAIは、NVIDIA製GPUを中心に計算資源を確保してきましたが、急速なユーザー増加や高度化するAIモデルの運用には、既存の供給体制では十分でない可能性があります。特にGPT-5の登場により、モデルの規模や複雑さが増しており、計算需要も急拡大しています。自社チップの開発は、こうした課題に対処するための戦略的な一手といえます。
また、OpenAIが自社チップを外部に販売せず社内利用に限定する点も重要です。これにより、OpenAIは必要な計算リソースを確保しつつ、外部への依存を減らし、サービスの安定性やスピードを向上させることが可能になります。Broadcomとの共同設計は、OpenAIが半導体技術に精通していない部分を補完する形で行われており、効率的かつ最適化されたAIチップを開発するための体制が整いつつあることが伺えます。
AIチップ市場では、NVIDIAが現在リーダーとして君臨しています。NVIDIAはAI向けGPU「H100」シリーズやその他製品で市場を支配しており、売上高は急速に伸びています。OpenAIが開発する「XPU」は、将来的にこうした市場の一部を占める可能性がありますが、現時点ではNVIDIAの優位は揺らいでいません。ただし、自社チップの導入により、OpenAIは計算リソースの柔軟性を確保し、AIサービスの拡張をより自律的に進められる点で優位性を持つことになります。
AI の成長戦略
今回の計画は、OpenAIの成長戦略の中核に位置付けられます。AIサービスの利用者数は急増しており、APIのレスポンス速度や安定性は、競争力を左右する重要な要素です。GPU供給の制約やコスト上昇のリスクを自社チップで回避することで、OpenAIはサービス品質を維持しつつ、将来的な拡張にも備えることができます。さらに、XPUの開発経験は、OpenAIにとってAI向けハードウェア設計の知見を蓄積する機会となり、長期的には独自の技術優位性の確立にもつながると考えられます。
総じて、OpenAIの自社AIチップ開発計画は、急速なユーザー増加と高度化するAIモデルに対応するための戦略的措置であり、NVIDIA依存からの脱却やコスト削減、計算リソースの安定確保を狙った重要な取り組みです。XPUの量産開始は来年を予定しており、これによりOpenAIは自社のAIサービスをより安定的かつ拡張可能な形で提供できる体制を整えつつあります。市場全体に与える影響も大きく、AIチップ分野の競争構造や将来の技術動向を左右する可能性があります。
出典: Engadjet


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