要旨
フランスの AI スタートアップ企業 Mistral が、新世代のオープンウェイトモデルファミリー「Mistral 3」を発表しました。10 のモデルから構成されるこのリリースには、マルチモーダルおよび多言語対応の大型フロンティアモデルと、オフライン対応で完全にカスタマイズ可能な 9 つの小型モデルが含まれています。本記事では、Mistral 3 の特徴と、同社が目指すオープン AI の未来について解説します。
Mistral 3 の全体像
Mistral 3 ファミリーには、3 つのサイズ(140 億、80 億、30 億パラメータ)の小型モデル「Ministral 3」と、最高性能のフラッグシップモデル「Mistral Large 3」が含まれています。Mistral Large 3 は、410 億個のアクティブパラメータと 6,750 億個の総パラメータを備えた Mixture of Experts アーキテクチャを採用しており、効率的な推論を実現しています。
すべてのモデルは Apache 2.0 ライセンスで公開されており、誰でも自由に利用できます。これは、OpenAI や Anthropic などのクローズドソースモデルとは対照的なアプローチです。オープンウェイトモデルはモデルのウェイトを公開しているため、ダウンロードして実行することができます。
小型モデルの優位性
Mistral の共同創業者兼チーフサイエンティストである Guillaume Lample 氏は、企業のユースケースの大部分は、特に微調整を行えば小型モデルで対処できると述べています。大規模なクローズドソースモデルは優れたパフォーマンスを発揮しますが、コストが高く、処理速度が遅いという課題があります。
Ministral 3 は単一の GPU で動作するため、オンプレミスサーバーからノートパソコン、ロボット、その他のエッジデバイスまで、手頃な価格のハードウェアに導入できます。この効率性は、データを社内に保管している企業だけでなく、オフラインで利用したい学生や遠隔地で作業するロボット工学チームにとっても重要な利点となります。
各モデルには Base(事前トレーニング済みの基礎モデル)、Instruct(会話やアシスタント向けに最適化されたチャットモデル)、Reasoning(複雑なロジックと分析タスク向けに最適化されたモデル)の 3 つのバリアントがあり、用途に応じて選択できます。
フロンティアモデル Mistral Large 3
Mistral Large 3 は、マルチモーダルと多言語機能を統合した最初のオープンフロンティアモデルの一つであり、Meta の Llama 3 や Alibaba の Qwen3-Omni と同等の性能を備えています。256,000 のコンテキストウィンドウ全体にわたって効率的な推論を可能にし、長大なドキュメントの処理や、複雑なエンタープライズタスクのエージェントアシスタントとしての機能を実現します。
同社は Large 3 を、ドキュメント分析、コーディング、コンテンツ作成、AI アシスタント、ワークフロー自動化に最適なソリューションとして位置付けています。このモデルは 3,000 台の NVIDIA H200 GPU を使用してゼロからトレーニングされました。
物理 AI への展開と実用性重視
Mistral は今年初めから、小型モデルをロボット、ドローン、車両に統合する取り組みを開始しています。シンガポールのホームチーム科学技術庁(HTX)とはロボット、サイバーセキュリティシステム、消防安全のための専用モデルの開発で、ドイツの防衛技術スタートアップ企業ヘルシングとはドローン向けの視覚・言語・行動モデルの開発で、そして自動車メーカーのステランティスとは車載 AI アシスタントの開発で協業しています。
Lample 氏は、AI がすべての人、特にインターネットにアクセスできない人々にもアクセスできるようにすることが使命の一つであると述べています。AI が少数の大規模研究所によって制御されることを防ぎ、分散型インテリジェンスを実現することが同社の目標です。
信頼性と独立性も重要な要素です。Lample 氏は、競合他社の API を使用すると定期的にダウンタイムが発生するため、大企業がこのような状況に耐えることはできないと指摘しています。
おわりに
設立 2 年のスタートアップ企業である Mistral は、これまでに約 27 億ドルを調達し、評価額は 137 億ドルとなっています。OpenAI や Anthropic などの競合企業が集めている金額に比べれば少ない規模ですが、Mistral 3 のリリースは、オープンウェイトモデルの可能性を示す重要な一歩となりました。
大規模なクローズドソースモデルが注目を集める中、Mistral は効率性、カスタマイズ性、アクセシビリティに焦点を当てたアプローチで、AI の民主化を推進しています。今後、企業が絶対的な性能とカスタマイズの柔軟性のどちらを優先するかが、AI 業界における重要な問いかけとなるでしょう。
※ ここに掲載されている情報は、発表日現在の情報です。最新の情報と異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。
出典: TechCrunch


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