PR

WordPress 新AIツール「Telex」を発表

thumbnail_wordpress_1920 Wordpress

Gutenbergブロック開発の未来を探る Automattic社CEOマット・マレンウェッグ氏がWordCamp US 2025で披露した、プロンプトベースのAIツール「Telex」。その機能、ビジョン、そしてWordPressが直面する課題を多角的に分析します。

序章

WordPressにおけるAI開発の新時代 2025年9月、ポートランドで開催されたWordCamp US 2025カンファレンスにて、WordPressの共同創設者でありAutomattic社のCEOであるマット・マレンウェッグ氏は、Webパブリッシングの未来を大きく変える可能性を秘めたAI開発ツール「Telex」の初期バージョンを発表しました。このツールは、プロンプト(指示文)を入力するだけでソフトウェアを構築する「バイブコーディング」サービスとして人気の「V0」や「Lovable」になぞらえ、「WordPress専用のV0」と表現されました。この発表は、WordPressがAI技術を本格的にプロジェクトの中核に据え、開発の民主化をさらに推し進めようとする明確な意思表示と言えます。

AIツール「Telex」の機能と現状

「Telex」は、WordPressのコンテンツエディタ「Gutenberg」を構成するブロック(テキスト、画像、カラムなどのモジュール化された要素)を、AIを用いて生成するためのツールです。現在、telex.automattic.aiというドメインで「実験的」サービスとして提供されています。 その利用方法は極めてシンプルです。ユーザーが作成したいコンテンツブロックの機能やデザインをテキストで入力すると、Telexはそれを解釈し、プラグインとしてインストール可能な.zipファイルを生成します。このファイルは、既存のWordPressサイトはもちろん、ホスティング環境なしでブラウザ上でWordPressを試せる「WordPress Playground」にも導入できます。 基調講演では、マレンウェッグ氏自身がTelexを使ってGutenbergブロックを作成するデモンストレーションを披露。さらに、ある開発者がこのツールを用いてシンプルなマーケティング用アニメーションを制作した事例も紹介され、その潜在能力の一端が示されました。しかし、Telexはまだプロトタイプの段階であり、初期のテスターからは「テストプロジェクトが失敗した」「意図通りに動作させるには追加の修正作業が必要だった」といったフィードバックも寄せられています。これは、ツールの完成までにはまだ長い道のりがあることを示唆していますが、今後の発展に大きな期待が寄せられています。

AutomatticのAI戦略とWordPressの未来ビジョン

Telexの発表は、単発の実験ではありません。これは、WordPressが2025年初頭に「プロジェクトの長期目標に沿ったAI製品開発を統括するAIチーム」の結成を発表したことに続く、具体的な成果物です。マレンウェッグ氏は、AIがWordPressの使命をさらに推進する可能性について、強い楽観論を表明しています。 > 「WordPressの使命の中核を成す、いわば出版の民主化について考える時、WordPressはこれまでコーディングなどの知識が必要で難しかったことを、人々がアクセスできるようにしてきました。…AIは、その使命をさらに加速させる可能性を秘めています。」 マレンウェッグ氏のビジョンは、AIを単なる機能追加ではなく、WordPressの根幹にある「誰もが自由に表現できる世界」を実現するための触媒と位置づけている点にあります。専門知識の壁をAIによって取り払うことで、より多くの人々が低コストかつオープンソースの形で、Webサイトの構築やコンテンツ制作を行えるようにすることを目指しています。一方で同氏は、AIを巡る過剰な期待(誇大宣伝)やバブル化の可能性といったリスクも認識しており、冷静な視点も持ち合わせています。それでもなお、「その核心には、何か大きな可能性を秘めた種が宿っています」と語り、WordPress開発におけるAIの重要性を強調しました。

Telex以外のAIへの取り組み

マレンウェッグ氏の講演では、Telex以外にも複数のAI関連の実験が紹介され、Automatticの多角的なアプローチが浮き彫りになりました。 ブラウザ内ヘルプアシスタント: コントリビューターデー(貢献者が集う開発イベント)で、わずか1〜2時間で構築されたというシンプルなAIツール。WordPressの管理画面内でユーザーを支援するアシスタントとして機能します。 Perplexity「Comet」の統合: マレンウェッグ氏が個人的にお気に入りだと語るAIブラウザ「Perplexity」の機能「Comet」を、WordPressのインターフェース内から直接操作できるようにする試み。これは、自社開発だけでなく、優れた外部AIツールを積極的にエコシステムに取り込む姿勢を示しています。 これらの取り組みは、Automatticが単一のソリューションに固執するのではなく、ユーザー体験を向上させるために様々な形でAIを活用しようとしていることを物語っています。

事業上の課題 WP Engineとの法的紛争

AIという未来への明るい展望が語られる一方で、マレンウェッグ氏は同社が直面する現実的な課題についても簡潔に言及しました。それは、大手ホスティングプロバイダーであるWP Engine社との法的な紛争です。 マレンウェッグ氏の主張の要点は、WP EngineがWordPressの成果物から多大な利益を得ているにもかかわらず、プロジェクトへの貢献が不十分であるという点です。さらに、同社がWordPressとの関連性について顧客に誤解を与えるようなマーケティングを行っていると指摘し、WordPress商標の正式なライセンス契約を求めています。 この件に関する最新情報として、マレンウェッグ氏は「司法制度の下で手続きが進められている」と述べ、裁判所の公正な判断を信じているとコメント。また、「和解会議に私は出席したが、相手方のCEOは出席しなかった」という事実を付け加え、交渉が順調ではないことを示唆しました。この問題は、オープンソースプロジェクトとその周辺でビジネスを展開する企業との間の、貢献と利益配分を巡る根深い課題を象徴しています。

結論 AIが切り拓くWordPressの次なるフロンティア

WordCamp US 2025で発表された「Telex」は、WordPressの未来像を具体的に示す重要な一歩です。プロトタイプ段階であり多くの課題を抱えているものの、プロンプトベースでGutenbergブロックを生成するというコンセプトは、Webサイト開発のあり方を根本から変える可能性を秘めています。 これは、WordPressが掲げる「出版の民主化」という理念を、AIという新たなテクノロジーによってさらに推し進めようとする野心的な試みです。技術的なハードルやWP Engineとの法的紛争といった課題は存在するものの、AutomatticがAIをWordPressエコシステムの中心に据え、開発のアクセシビリティを極限まで高めようとしている方向性は明確です。今、WordPressはAIと共に、次なるフロンティアへと歩みを進めようとしています。

出典: Tech Crunch

コメント